子供の形について
Kanoguti
きょうは、ままといっしょにあそぶはなしをします。
わかりました。わかりました。
ありがとう、まま。おかえりなさい、まま。
さあ、まま、いっしょにあそびませんか。
おお、いいですよ。
おー。いたいいたい。おー。いたいいたい。
そこらへんでまっていてください。
さて、ひとやすみでもしませんか、まま。
わかりました。
わたしは、あなたのむすこですから、なんでもしたがいましょう。
いいこだ。いいこだ。
まま。まま。まま。まま。
あらら、もうすぐはずれてしまうではありませんか。
おお、わすれていました。いま、きづきました。
さて、いまからはずれてしまったおいしゃさんにいきましょう。
そうですね、いきましょう。いきましょう。
おいしゃさん。こんにちは。
おお、いらっしゃいいらっしゃい。いらっしゃいませ。
さて、わたしはずっとみまもっていますから、
ままはとびらのまえでまっていてください。
わかりました。まま。
さて、いっしょにはんぶんこにしましょうね。
わかりました。おいしゃさん。
では、はじめましょうか、ままさん。
はい。はじめましょう。
あらら。あらら。あらら。あらら。
なんということなのでしょうか、まったくいたくありません。
どういうことなんですか、まま。
それは、おいしゃさんがおこなったしゅじゅつのおかげです。
えらいえらい。
そうだったんですか、えらいですね。ままさんは。
そうです。わたしはすべてみまもっていて、
どこにでもあらわれる、まるでかみきれのようなそんざいなのです。
なるほど。わたしはなっとくしました。
このしょうてんがいはあなたにたくしましょう。
わかりました。わかりました。
でも、わたしはほんとうはそんなことしたくないのです。
そうですか。ありがとうございます。ざんねんです。えらいです。
わたしはいえにかえってきました。
まま、ただいま。
おかえりなさい、まま。
ぎんこうにはいってきてくれましたか。
もちろん、いってきませんといいたいところですが、
じつはもっとすてきなおいしゃさんとのかんけいをもつことができたのです。
おー。それはそれはすてきなことじゃないですか。
わーい。わーい。
人殺し。嘘つき。人でなし。
お前なんか死んでしまえばいいのです。
この世から消えてなくなってしまえばいいのです。
あなたは皆に迷惑をかけすぎたのです。
一生殻の中に引き籠っていればいいのです。
あなたは人間ではないものになってしまえばいいのです。
死ね。死ね。死ね。死ね。
私は人を殺してなんかいない!
誰にも嘘なんかついていない!
私は人でなしなんかじゃない!
あなたこそ人殺しなのよ!
いつもいつも弱者を見くびって、
いつもいつも人を殺しているようなものじゃない!
あなたこそ消えて無くなってしまえばいいのよ!
私は悪くなんか無い!
さてさて、きょうは、ままといっしょにあそぶはなしをします。
でも、ざんねんながら、ままは、きえてなくなってしまいました。
どうしてかといいますと、
わたしがけっきょく、むざいだったからです。
かのじょが人殺しで嘘つきで人でなしだったからです。
ここまで、ついてきてくれてありがとうございます。
ここまで、わたしのはっぴょうをきいてくれてありがとうございます。
これで、わたしのおいしゃさんごっこを、おわります。
=おわり=