§6

ふと気が付くと、私は「学校」の中にいた。

隣には「人間」が居た。

「さあ、教室に入りなさい。」

『えっ…!は、はい…。』

…ガラガラガラッ…ピシャン。

「…はーい、みんな静かにー。」

「うおっ、あの子可愛いー!」

「あの子転校生かな?」

「そこ、…あたり!君たちが待ちに待っていた転校生です!!」

「うおー!やったー!!」

『あ、あの…すみません…。』

「ん?」

『…名前…。』

「お、あ、そーだった。
ではみんな、これからこの転校生の名前を書くからなー。」

『…………!?』

カリカリカリ…。

「…っ!!ハハハハハ!!ひでぇ名前!!」

渡辺ひなってひどい名前だなぁー!!」

『あ、あの…!わ、私、そんな名前じゃ…!?』

「だっせー名前!!ハハハハハハハハ!!!!」

「先生が笑っちゃダメでしょ~!!」

「あ、ごめんごめん~!!」

『…ぐすっ…。』

「お、ヒヨコが泣き出すぞ~!!」

『うぅ…みんなひどい…。』

ハハハハハハ

ハハハハハハハハハハハハハ




§7

「よーし、授業始めるぞー。」

「先生…ッハハハ…!!」

「ん?なに笑ってるんだよ、教えろよ。」

「ヒヨコが教科書とか全部持ってきてないそーです!!!!!!」

「それはひどいねぇ~!!授業やる気あるのかな~?君~。」

『…ごめんなさい…。』

「隣に借りろよ!!ハハハハ!!」

「おい加藤、ヒヨコに教科書とかシャーペンとか貸してやれよ!!」

「え?なんのこと?よく聞こえんかった!!!!」

「ハハハハハハハ!!!」

「ヒヨコ、ごめんな~!!!!」

『…………。』

「おいヒヨコ、お前授業できねーから廊下に一日中立ってろ~!!」

「せんせーひでぇ~!!」

「鬼畜だな!!!!」

『…………………………。』

ガラガラガラッ、…ピシャン。

『…………………………………………。』

『…ぐすっ…。』

…その後も、私は放課後まで一日中廊下で立っていた。

人間が黒い板に見えた。



「そんちょうさん!!」

ヒーラちゃんのおかあさんがそんちょうさんのところへふたたびきました。

「なーんじゃ…またようか?」

「ええ…その…ヒーラにはなにももたせていなかったようですが…。」

「…ヒーラちゃんはあたまがいいからなんとかしてくれるとおもいます!!
あ、でもヒーラちゃんにはさらにあたまをよくしてほしいから、
『がっこう』にかようのにひつようなさいていげんのことはしましたよ。
にゅうがくてつづきとか…せいふくとか…。」

「そうですか…よかったです。ありがとうございました!」

「いえいえ!!」

みんな板に見えた。

…家へ帰る時間らしい。

私は校門を出た。

家に帰らないと。

………。

………家?

………………私の家。

………………………………………。

……………………………………………………どこ?


§8

泊まれるところも無いし、

「お金」も無いし、

何もできなかった私は、

「公園」の「オブジェ」のようなものの穴の中で寝た。

…「学校」。

…怖いな。

この「公園」にずっと居たいな。

…この世界では私の仲間も、友達も一人もできないだろう。

私は「人間」にも初めて会ったし、

その「人間」の姿になった私を見たら、

気持ちが悪くなった。

ここまで「人間」というものが汚いなんて想定外だった。

…村長さんの言っていたことは嘘だったんだ。

私は騙されたんだ。

…私の体から力が抜けていき、

眠くなった…。



…いつのまにか寝てしまっていたようだ。

…体に変な感触が…。

………?

…誰か…いる…?

私は起きた。

『…だ、誰!?きゃっ!!』

「だ、黙れ…。」

『…!!ひゃっ、あぅっ…………!!!んんんー!!!!!!』

「お、おとなしく…してれば、ね…何もしないから…。」

『………!!んんんんー!!!!!!!』

「ほらほら、大丈夫だよ、痛くしないから…。」

『……………。』

「よおし…それでいいんだ…いい子だね…ヒヒッ…ハハハハッ…。」

『…!!!!んんん!!!!!んんんんんんんーー!!!!』

「へへへへへへへ、大丈夫だって…ハハハハハハハハ!!!!!」

『んんんんんんんんんんーーーーー!!!!』



泥人形は、彼女の姿を見て、熱くなり、たくさんいじめました。

…正気を取り戻した頃には、

外は雨が降っていた。

私は頭の中が真っ白になっていた。

体も、真っ白になった。


§9

…おなかすいたなぁ。

…もう、「学校」なんて行きたくないよ。

…みんな私を見てひどいことばかり言うし。

…なんで「死ね」とか言われるんだろう。

…なんで生きちゃいけないんだろう。

…。

…私、ネガティブなことばかり言ってる…。

…天使がこんなこと言ってていいのかな。

…ははは、いくら天使でも、こんな汚い国は直せないよ…。

…そういえば私って、天使の国でも友達がいなかったっけ。

…結局この国でも誰も助けてくれなかった…。

…うわぁ…服がすごい汚れてる…。

…すっごく変な臭いもするし…。

…帰りたいな。

…でも…。

…帰っても、つらいことばかりなんだろうな。



「  ヒーラ    お母さ     」

「    虐    いじめ         」

「       友達         奇行  」

「自殺   『  死     助け     』  言っ     」

村の人はみんな私のことが嫌いだった。

いつから嫌われるのが始まったんだっけ…。

村長さんが変わってからだったかな…。

前の村長さんの頃はとても幸せだった。

あの時が続いてほしかった。

でも、仕事が苦しくて自殺してしまい、当時みんなから嫌われていたおじさんが村長になった。

私とみんな…いや、私は反対していた。

でも、おじさんは、

「私に従わない者は邪魔だからバカにしてもいい」

という、ひどいルールを村に作った。

それからだ。

私がみんなから嫌われ始めたのは。


§10



『…っ!!ここは…。』

「おかえり!!ヒーラちゃん!!」

『そんちょう…さん?』

そんちょうさんは、ヒーラちゃんにつたえることがあったので、

もとのせかいにつれもどしました。

『そ…そんちょうさん…!!』

「おお、どうしたどうした、いつものまじめそうなヒーラちゃんじゃないみたいじゃないか。」

『わたし…もうあんなくにいらないです!だからおねがいします!!
もう…このむらにいさせてください!!』

「何を言ってるんだ。」

『え…?』

「君は約束しただろう?汚いあの国をきれいにする…と。」

『そ、そうですけど…でもっ…。』

「一週間後までに地球をきれいにしろ。いいな。」

『そんな…むりですよ…!!』

「っていうことなんだ!!じゃあね!!ヒーラちゃん!!」

『まってください!!

村長さん!!』

「何あの子…急に叫びだしたわ…。」

「びっくりしたわ…。あ、今の時間って子供は学校に行っている時間だよねぇ!?」

「本当にそうだわ…うちの子もああいう子にはなってほしくないわ…。」

…いつの間にか、私は「地球」へ戻っていたみたいだ。

『一週間後に…「地球」を…。』

ははは、無理だよ。

こんな汚い国、一週間なんかで直せないよ。

一週間後になったら、きっと怒られるんだろうな。

…ははははははははっははあはっはっははははははは。

もう頭の中が混乱して、

ダメになって…

…もう疲れたよ。

私は地面に大の字で寝て、

青空を見た。

『…なんだ…空はこんなにきれいなのに…。』

…そういえば、「地球」はどこが汚れているのかな…?

この町にはどこにもゴミとかは落ちていないし、

地面は整備されていてきれいだった。

私がすることは…何もないと思うのに…。


§11

『ここは………。』

また「すべてが板でできている地球」の空間になった。

私が今いる「公園」もこの空間では板になっていた。

さっきまで居た「地球」と違うところは…。

・物(建造物)や壁が板になっている。

・空は紫色で、黒い雲が浮かんでいる。

…「ここ」は、間違いなく汚かった。

そう感じた瞬間、もとの「地球」の空間に戻った。

いつもの風景。

今の汚い空間は一体なんなのかは、

私には理解できなかった。

毎日、公園にやってくる「人間」は私にいろいろ言ってきた。

「おねーちゃん、なにしてるの?」

「しっ!!あんな子、見ちゃだめよ!!」

「おい!!遊具の中に人がいるよ!!」

「わあ、本当だ!!」

「おねえさん、こんなところでなにしてるの?」

『…ここに…住んでるの。』

「…っ!このおねえさん、すごく臭いよ…!!」

「お母さんに聞いたけど、こういう人って『ホームレス』って言うんだって!!」

「ハハハハ!!『ホームレス』!!」

「『ホームレス』!!」

「『ホームレス』!!!!!!!」

『…やめて…やめてよ…!!…もうこれ以上私を苦しめるのをやめてよおお!!!』

「わああああ!!『ホームレス』が怒ったぞー!!」

「逃げろー!!!」

『はぁ…はぁ…はぁ…。』

『…「ホームレス」…。』



…この一週間。

この「地球」のどこが汚いのかは結局わからなかった。

ただ、確実に「板の世界の地球」は間違いなく汚れていた。

その世界への確実な行き方さえわかれば、

きれいにできたはずだ。

…しかし、もし行ったとしても、

どこをどうきれいにすればいいのかがわからない。

結局、この「きれいな地球」の空間でずっと何もせずに過ごしてしまった。

…おなかがすいたときは、

道路の隅にいっぱい食べ物が溜まっていたから、

それを食べて一週間頑張って生きた。

「死ね」とか「気持ち悪い」とか言われたけど、

頑張って生きた。

…うぅ…ぐすっ…。

人間が出した「ゴミ」だとはわかっていたよ…!

だけど、食べれるものがほとんど無かったよ…!!

すごくおなかがすいたときは「人間」に言ったよ…!!

でも、私、「汚い」からくれなかったよ…!!!

…「汚い」…?

…私。

…私が…。

………。

私が「汚い」…?



そっかぁ!!私をきれいにすればいいんだ!!

あはは!!なんでこんなことに気付かなかったんだろう!!

あははははははは!!なーんだ!!簡単だったんだ!!

私をきれいにすればいいんだ!!!

「地球」はきれいなんだし、私が汚いからダメなんだ!!

私が邪魔なんだ!!

…私が…邪魔…。

…私がいなくなれば…。


§12

自分がおかしなことを言ってるのはわかっていた。

でも、今の私にできることは、

自殺をすることしか思いつかなくなってしまった。

もう、「地球」をきれいにするなんてどうでもよくなってしまった。

うっ…ぐすっ…ひっく…。

…ごめんなさい。

…わたし、もう疲れたよ。

…結局こっちの世界でも邪魔扱いされるから。

……。



私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか
私のどこが汚いのか

「…そろそろ時間だな。」

『…さようなら。』



地球を綺麗にする